肌トラブルの原因は「肌のバリア機能」の低下によるもの
皮膚は、大きく三つの層から成り立っています。外側から順に「表皮」「真皮」「皮下組織」です。私たちが肌といっているのは、最も外側の表皮のことで、厚さわずか0.2㎜しかありませんが、私たちのからだにとって、きわめて重要な働きをしています。
そのひとつが「バリア機能」です。バリア機能とは、皮膚の水分の蒸発をおさえて、しっとりとした柔らかさを保ったり、外からの異物の侵入や刺激を防いで、からだを守る働きのことです。肌のトラブルは、その低下からおこります。
乾燥肌は角質層の水分不足
バリア機能を担っているのが、表皮のいちばん外側にある角質層。私たちが皮膚あるいは肌とよんでいる部分です。乾燥肌の人は、この角質層の水分や皮脂量が不足しているため、外気が乾燥する冬になるととくに、肌の表面が硬く、カサカサになります。
また肌のタイプにかかわらず、角質層表面に微生物がふえたり、皮膚が炎症をおこしたりすると肌がカサついてきます。この場合、角質層にすき間ができて、外から異物が侵入しやすくなり皮膚炎やトビヒ、イボ、ミズイボなどの感染症をおこすことも多くなります。
手や足はひび割れしやすい
ただし、同じ角質層でも手のひらと足の裏は、角質層がきわめて厚く、皮脂腺がありません。とくにかかとは大人になると角質層が100層以上にもなり、内部からの水分補給が間に合わず、空気が乾燥しがちな冬の気候では、コチコチになってひび割れることもあります。
水分を保った「もち肌」を目指すためには
健康な肌では、皮脂、天然保湿因子(NMF)を含む角質細胞が何層にも重なり、その間を、セラミドを主成分とする細胞間脂質がきっちり埋めています。
この緊密な「ラメラ構造」によって、皮膚は異物の通り抜けるのを妨げ、水分をほどよく保つことができるのです。
また、健康な人の肌の表面は適度な皮脂と汗の分泌によって弱酸性状態になっており、細菌の繁殖をおさえるようになっています。健康な人の肌がきれいで、うるおいがあるのは、肌の角質層のバリア機能が十分に働いているからです。人は、このような肌を「もち肌」といいました。
肌は6週間でターンオーバーを繰り返す
健康な肌では、バリア機能を十分に発揮するために、角質層が、つねに新陳代謝を繰り返しています。これを皮膚のターンオーバーといい、表皮のいちばん内側で基底細胞として生まれた角質細胞は、分化しながらしだいに外側に移動して角質層となり、ついに垢となってはがれ落ちます。この間約6週間といわれています。
古い角質層が垢となってはがれ落ちる一方で、表皮のいちばん内側では、また新しい基底細胞が生まれ、角質細胞に育っていきます。こうして角質層は絶えず世代交代をしています。
皮膚のターンオーバーの仕組み
表皮はからだを守るために表面の角質層を新しいものに作り変えます基底層で新しい細胞が生まれ、角質層の古い角質細胞がはがれ落ちるまで6週間程度といわれています。そのプロセスはこのような形です。
1.基底層にある基底細胞が分裂し新たな細胞が上層へ押し上げられます。
2.さらに分裂を繰り返し、有棘細顆粒細胞、角質細胞へと変化しながら上昇します。
3.角質層の表層は新しい角質層にとって変り、古い角質は垢となってはがれ落ちます
角質層はケラチンで出来ている
角質層は、何でできているのでしょうか。おもにケラチンというたんぱく質からできています。ケラチンは通常のたんぱく質とくらべ、SS結合という強い結合もっているために、安定した硬い物質になります。
私たちが紀元前につくられたエジプトのミイラを、今日になってなお見ることができるのも、人間のからだが、ケラチンによっておおわれているからです。少し意外な感じがしますが、爪や毛もケラチンでできています。硬くて、耐久性があるので、肌をおおう角質層の主成分をソフトケラチンとよぶのに対して、ハードケラチンとよんでいます。
表皮の下には真皮があります。真皮は、コラーゲンとエラスチンという弾力性にとんだたんぱく質線維で成り立ち、健康な皮膚の「張り」の源になっています。毛包と皮脂腺、汗腺、さらには血管、リンパ管、神経なども真皮のなかを通っています。